トホホ登山(^-^o)


カメラが好き

                                       by:富嶽仙人

嗚呼・・痛恨のフェイスクラッシャー
  伝説のマキナ67、晩秋の富士に死す

 山岳写真は自然の風景を精緻に写し撮りたいということから、古くはシートフイルムを使った大きなカメラで撮られていました。
フイルムの技術が進んで、今日では小さな画面のフイルムでもそこそこの画質が得られるようになったとはいえ、本格的な山の写真はやはりできるだけ大きな画面のフイルムで撮りたいものです。
 
 35mmカメラより大きな画面で・・ということになると中判カメラになります。
しかしながらこの中判カメラ、それも67ともなると携行に閉口するほどの図体と重さになります。
フィールドカメラと銘打たれたペンタックス67なども、マジで山に担ぎ上げようとすれば並外れた体力を要求されることになり、私などのような非力な人間ではなかなか携行する気が起きないのが現実です。
しかし世の中よくしたもので、中判カメラの中には携帯性が考慮された機種も存在するのです。
 最近で言えばマミヤ7。
しかしこのカメラは軽いものの意外と嵩張るという欠点があります。
かつて、マキナ67というカメラが存在しました。
このカメラはレンズが蛇腹式で携行時には完全にボディー内に収納できる構造になっており、収納した状態はまるで小さな弁当箱です。
67のフォーマットでは史上最高の携帯性を誇るカメラといっても過言ではないでしょう。
 
 「マミヤ7の出物はないかしら」
といつものようにぶらりと入った石和温泉近くの「シンゲンカメラ」。
実に実に美しいマキナさんを発見したのです。もちろん箱付き。確か125000円だったと記憶しています。
 先に述べましたように、このカメラは携帯にはうってつけ。
ザックの中での占有体積は35mmカメラのそれよりも遥かに小さいのです。
いつもザックにマキナ67そういっても過言ではなかったかも知れません。
蛇腹のタスキに距離計が組み込まれているという華奢な構造なのですが、レンズを引っ込めてしまえば頭を隠した「亀」。
少々ラフに扱ってもびくともしませんでした。

 もう一つこのカメラが有効に使える場面があります。それは夜中のバルブ撮影です。メカシャッターのマキナは長時間露出で電池が消耗することがありません。しかしこのメリットがあの死亡事故を引き起こす要因になったのですから世の中わからないものです。
 
 晩秋のある夜、富士山富士宮五合目で夜明け前から撮影をしようと出かけました。
そうしていつものようにマキナでバルブ撮影を開始。
三脚はスリックのプロフェッショナル2でした。強い風が吹いてはいたのですが、不安定な感じは全くしなかったので、寒いことも重なってセッティングに手を抜いたことは事実です。
 
 あまりに寒いのでバルブ中、風を避けようと車に戻り、カメラのほうを振り返りました。
 「あれ? 少し傾いているな・・」
もちろんカメラは水平なのですが、三脚そのものは少し傾いており、雲台で水平を調整している…まあよくあることだとは思うのですが…そういう状態にありました。
 「直さなきゃ…」
とはいえ露光中なわけですから、いきなり動かすわけにもいきません。
まっ、この露光は早めに切り上げて直そう…もう5分くらいで…と思ったそのときです。
 
 カメラが左にすーっと動き…そのまま闇のなかに消えてしまったのです。
 
血の気が失せました。
 
 私は慌てて車から出て、闇の中に倒れた三脚に駈け寄って抱き起こしました。
三脚ネジが少し緩んでレンズを下に向けたマキナはグラグラの状態。
隅にキズは出来ているようですが、背中から見る限りそれほどのダメージは受けていないような印象を受けました。
もちろん、それが私の希望的乾燥にすぎなかったのは言うまでもありません。
カメラを引き起こして上から眺めてみると・・・
なんとレンズがシフトしています。もちろんボディーには収納できない状態です。
 
 現実を直視したくない気持ちってわかりますよね。
 
 三脚から外したカメラを抱いて車に戻ったものの、私にはそれを明るい場所でしっかり見つめる勇気はとてもありませんでした。
後部座席に有った衣類にそれをくるんで助手席に置き、EOS3で夜明けの撮影を続行したのです。
むろん…もう風を避ける為に車に戻るというような軟弱なことはしません。 
 
 このときまでは、
「まだ直るかもしれない…修理代はどのくらいなんだろう…」などとと考えていました。
マキナ67はドイとマミヤが協力して作り上げたカメラで、メーカーとしてはもう存在していないのですが、専門に修理をしてくれるところがあるのです。
 
 しかし、気持ちが治まった後で、冷静に被害状況を確かめると、とても「修理」などできるような状態ではないことが判りました。
レンズ周り、距離計・・すべてが破壊されていたのです。 
 
 確かに亀の状態では頑丈なマキナ。
しかし蛇腹を伸ばした撮影体制では他のどんなカメラよりも弱いカメラでした。
被害状況から察するに最初に地面に激突したのレンズの左側先端、一番弱い場所です。
倒れにくく心強い重量級の三脚も、倒れ始めたとたんに衝撃を倍加する力となって働いたのでしょう。
 「フェイスクラッシャー」
重いカメラ本体とも相まって、レンズ先端に加わった衝撃は並大抵のものではなかったはずです。
 
 こうしてようやく現実を直視できたとき、125000円という購入価格が、これまの私のカメラ購入価格のなかで最高に近い額だったことに気が付きました。
 
 私は誰・・・?  ここは何処・・・?
 
 


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